2008年07月30日

【地球環境問題事典】生物多様性の減少(野生生物種の減少)

 2月に始まりました地球環境問題事典も、かなり大詰めになって来ました。今週は、生物多様性の問題に着目します。

【生物多様性とは】
 生物多様性(biodiversity)とは、地球上の生物に見られるさまざまな変異性や多様性を包括的に表していて、遺伝子・種・生態系の三つの異なるレベルで考えられる。遺伝子レベルの多様性とは、ある生物種の遺伝的変異をさす。種レベルの多様性は、ある地域にどれだけ多様な生物種が存在しているかで表される。そして、生態系レベルの多様性は、ある地域に樹林・草原・湿地といったさまざまな生態系がどれだけ存在するかで示される。

 地球上に現在生存している生物種の数は数百万から数千万と推定されている。そのうち、分類学者により命名されているのは140万種に過ぎず、保全策を検討できるほどその生態がわかっているものは、そのまたごく一部である。
 生物多様性の減少は、特定の種の個体数減少や絶滅、野生動植物の生息・生育環境の減少・消失という形で進行している。国際自然保護連合(International Union for Conservation of Nature and Natural Resources; IUCN)の2003年版レッドリストによれば、哺乳類1130種(全体の約23%)、鳥類1194種(同12%)が絶滅の危機にさらされている。
 生物多様性は、地球上に一様に分布しているのではない。既知の植物種の44%、脊椎動物の35%が、地球上の陸域の1.4%を占めるに過ぎない地域に固有となっており、その多くの地域が低緯度の地域に集中している。このような生物多様性の保全上重要でありながら、改変の対象にされやすい陸域は、ホットスポットとよばれている。

【生物多様性の減少の原因】
 生物多様性の減少の直接的な原因には、過度の捕獲・採取、汚染物質の環境への放出、外来生物種の侵入による捕食・競合・交雑、生息・生育環境の改変などが挙げられる。また、今後、温暖化の気候変動やその他さまざまな地球環境問題が生物多様性に影響を与えてくることが懸念されている。
 また、これらの現象が引き起こされる背景には、南北問題に代表される貧困、人口の増加による資源消費量の増加や社会的・政治的・経済的な要因などがあるため、単に直接的な要因を規制するような措置では、問題の根本的解決にはならない。有効な生物多様性保全策をとるためには、このような背景にある要因を考慮することが必要である。


1.過度の捕獲・採取
 人口が増加したことによる過度の捕獲・採取は、生物多様性の減少の根本的な原因として最も重要なものの一つである。


2.汚染物質の環境への放出による影響
 さまざまな汚染物質が環境へ放出されることも生物多様性の減少の原因である。特に水環境からの影響には、重金属・揮発性有機化合物の排出、微生物による汚染、油による汚染、固形廃棄物の排出などさまざまなものがある。その中から、特徴的なものを幾つか述べる。アルキル水銀やPCBは、生物による濃縮率が高く、汚染地区で魚介類に高濃度に蓄積されるため、生物多様性に大きな影響を与える。セレン中毒は、家畜に対して、暈倒病やアルカリ病などを引き起こすことが知られている。シアン化合物は微量でも水生生物に障害を与えるため、生物多様性の減少への影響が大きい。油の流出が起こると、特に沿岸部で短期間のうちにその豊富な生態系に多大な悪影響をおよぼし、魚類、海底生物、海鳥、マングローブ林やサンゴ礁などに壊滅的な打撃を与える。固形廃棄物の場合は、餌と間違えて魚や海鳥が飲み込むと、消化器に入り込み、動物の健康に悪影響を及ぼす。ホウ素が大量に排出されると、穀物の発育障害を引き起こすことがある。
 これ以外に、水環境の中でも、特に閉鎖性海域などの生物に大きな影響を与えるものがある。その原因となるのが、土砂の流入、有機物汚濁によるヘドロの蓄積、赤潮・アオコのプランクトンの死骸の底質への蓄積、貧酸素水塊の形成、有害プランクトンの発生などである。
 また、大気環境からの影響としては、紫外線の増加による土壌微生物や植物プランクトンの減少、酸性雨による河川・湖沼など地表水の酸性化による魚への影響などがある。


3.外来生物種の侵入による捕食・競合・交雑
 さまざまな要因により、本来の分布域を越えて、従来生息していなかった地域に生物種が侵入してくるという状況が発生している。それらの生物種による捕食・競合・交雑などが、生物多様性の減少の原因となっている。生物が新しい地域に入り込むというプロセスは、風や海流などの自然的要因による場合もあるが、現在では、圧倒的に人為的な要因が介在していることが多い。しかも、人類の社会・経済活動の拡大に伴って、その数も急激に増加している。以下に、外来生物種の侵入が起こる要因を挙げる。
 陸上生物に関する要因としては、栽培・飼育・観賞用としての人為的に導入される場合や、輸入木材や家畜飼料などに紛れ込んでくることなどにより、これまで生息していなかった地域にさまざまな生物種が移入される場合などがある。また、水生生物に関しては、バラスト水の排出による要因、輸入海砂の利用による要因、温・冷排水に起因する海洋水温の変化による要因などにより、他の生物種の侵入が発生している。


4.生息・生育環境の改変
 生物の生息環境・生育環境が大きく変化すると、生物多様性の減少に大きな影響を与える。生息・生育環境の改変の要因としては、以下のようなものが挙げられる。
 まずは、人間による乱開発が直接生息・生育環境の改変をもたらすというものがある。工業プロセスや都市化現象による乱開発には、湿地の乾燥化や、埋め立てによる自然環境の破壊、自然地域の細分化・孤立化などがある。水環境においても、港湾・臨海空港の建設や干拓・埋め立て・沖合人工島・河川構造物の建設などが海底・沿岸域など地形を変化させ、水環境における生息・生育環境の変化をもたらす。また、これらの水環境における開発は、海流・潮流、海洋大循環の変化をもたらし、そこで生息している水棲生物の生息・生育環境の変化に影響を与えることも考えられる。
 また、森林の減少や砂漠化の進行により、動植物の生息域が消失するので、生物多様性の減少の原因となる。洪水・渇水による河川中の生息場所の減少なども原因となる。
他には、地球温暖化による気温上昇の影響も受けることが予想される。気温が上昇すると、陸上生態系では植生帯の移動がおこり、その移動速度に追いつけない種は、存続が危ぶまれることになる。また、気温の上昇は、病害虫の分布の変化や森林火災の増加などを引き起こし、生息種の変化に結びつく。また、水域生態系についても、水温の変化などにより、冷水種が消滅するなど生息種が変化し、生息環境の変化につながる。陸上における病害虫分布の変化は、生物多様性の減少だけでなく、農作物収穫量の減少やマラリアなどの蔓延による人類への健康被害ももたらすと予想される。


5.他の地球環境問題による要因
 上記に挙げたもの以外にも、他の地球環境問題が進行し、生物多様性に影響が及んでくることが懸念されているものがいくつかある。
 地球温暖化による降水パターンの変化により、湿地など沿岸域の生態系へ影響を与え、沿岸漁業や観光資源へも影響を引き起こすと考えられる。また、地球温暖化による海洋大循環の変化が起こると、生息環境の改変の要因になると予測される。
 さらに、淡水資源の不足問題により、河川・湖沼などの生息環境に影響がでることも考えられる。
また、現在は、特に問題になっていないが、今後の海底エネルギー資源の開発に伴って二酸化炭素の海洋隔離を行う構想がある。この際に二酸化炭素が漏出することで、水環境へ二酸化炭素が排出され、二酸化炭素に弱い稚魚などに影響を与えることが考えられる。


【生物多様性の減少による影響】
 生物多様性の減少は、さまざまな場面に影響を与える。
 まず、実際に人間が資源として利用しているものがなくなってしまうというものがある。生物多様性の減少(野生生物の減少)は、我々が生態系から直接利用している食糧や燃料、医薬品などの減少・不足につながる。食糧の中に占める野生生物の割合は、途上国で高いと考えられがちであるが、先進国においても大量の水産資源が野生生物によるものであることを忘れてはならない。また、多くの途上国において、薪が燃料の大きな部分を占めているし、医薬品については、先進国でその多くが野生生物由来のものである。
 また、遺伝子資源の喪失という意味では、医薬品の開発や農作物・家畜の品種改良に影響を与えることになる。
 生物多様性の保全について、資源として価値があるものに注目しすぎることは、当面利用できない野生生物の保全を軽視することにつながるため、生物多様性を文化的、倫理的観点からも評価し、適切な保全対策をとらなければならない。
 ほかに、生態系による水源涵養や土壌形成といった機能を生物多様性として考える場合もある。(これらについては、森林の減少や砂漠化などといった分野で取り扱っているので、詳細は取り上げない)


ブログランキングへの応援 お願いします!!
にほんブログ村 環境ブログへ


posted by rido at 00:00 | Comment(2) | TrackBack(0) | 地球環境問題事典 ブックマークに追加する
この記事へのコメント
はじめまして♪けいと申します。

気になるブログだったのでコメントさせていただきます。
また寄らせていただきます♪

エコに興味があるということで、お友達になれればと思います。よろしくです。

http://econewss.seesaa.net/
Posted by ケイ at 2008年07月30日 20:44
009年-2010年「地球温暖化ニュース」から。
「魚の平均体重がこの30年で半減している。」
「野生の脊椎動物の個体数は1970年に比べて2000年には60%までにも減少している。」
現状がここまで酷いとは驚いた。排気ガスを垂れ流す、石油文明がここまで酷いとは。
Posted by 地下水 at 2010年07月22日 12:14
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック



『エコエコ促進日記』は、
チームマイナス6%に
参加しています!!
eco-people
筆者ridoは、エコ検定を取得した
「eco people」です!

×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。