2008年03月12日

【地球環境問題事典】さまざまな大気汚染の物質とその影響

大気汚染物質の排出と影響

今回は、主な大気汚染の原因となる物質の排出原因とその影響について、まとめてみましょう。

1.窒素酸化物(NOx)
 窒素酸化物とは、窒素と酸素の化合物であり、NO、NO2、N2O4、NO3、N2O、N2O5などの総称である。しかし、地球環境問題として大きな影響を与えるものは、物が燃えるときに空気中の窒素が酸素と結合して生じる一酸化窒素(NO)や二酸化窒素(NO2)などが重要な成分であり、通常この2物質のことをさす。

【窒素酸化物の排出原因】
 窒素酸化物の発生原因は、化石エネルギーの燃焼によるものがかなりの割合を占めている。中でも、自動車の排気ガスからの排出や発電のための燃料の燃焼を合わせると、人為起源の排出全体の半分以上にものぼる。また、バイオマス燃焼による排出については、以前は自然発生による森林火災が主な原因だったが、近年は焼き畑農業によるものの割合が高く、人為発生源として分類される。
 自然発生源としては、雷放電による生成と土壌中の微生物の活動による排出が年間12TgNにのぼる。雷放電による生成では、雷放電のエネルギーの推定や単位エネルギー当たりの一酸化窒素の生成量の推定に大きな違いがあることから、この雷放電による一酸化窒素の生成の全世界の見積もりには、大きな幅がある。
 土壌の微生物活動による放出は、好気性条件下でのアンモニウムイオンから亜硝酸イオンおよび硝酸イオンへの硝化過程、また、嫌気性条件下での硝酸から亜酸化窒素および窒素への脱窒過程によるものである。

【窒素酸化物の影響】
 窒素酸化物は、発生源近傍での人の健康への直接影響のほかに、光化学オキシダントへ影響や、酸性沈着(酸性雨・酸性霧)への影響が挙げられる。
 人の健康への影響としては、高濃度の場合、目、鼻、のどを強く刺激し、咳、咽頭痛が起こり、めまい、頭痛、吐き気の症状を招く。一般的に低濃度暴露が問題になっており、慢性症状として、慢性気管支炎、胃腸障害、歯牙酸食、不眠症などを引き起こす。また、感染症に対する抵抗力を弱める。


2.一酸化炭素(CO)

【一酸化炭素の排出原因】
 一酸化炭素は、燃料の不完全燃焼によって排出される。大部分は、自動車の排気ガスによるものであり、その他工業プロセスからの燃料の不完全燃焼によって排出されている。

【一酸化炭素の影響】
 一酸化炭素は、頭痛、耳鳴り、吐き気などの人体への健康被害をもたらす。また、濃度が高くなると死に至らしめる。そのメカニズムは、血中のヘモグロビンと簡単に結合し、血液の酸素輸送を阻害し、細胞での酸素利用を低下させることにより、影響は急性に起こる。


3.硫黄酸化物(SOx)
 硫黄は、地球上に広く分布している物質であり、岩石中、火山ガス中、海水中などに存在している。また、生体に不可欠な元素であり、種々の有機体の化合物がある。
 硫黄酸化物とは、硫黄と酸素の化合物の総称。二酸化硫黄(SO2)が最も一般的だが、三酸化硫黄(SO3)、硫酸ミスト(H2SO4)などが含まれる。工場や火力発電所で石炭、重油を燃焼する際、その燃料中に存在する硫黄分が硫黄酸化物となり排出ガス中に含まれ放出される。

【硫黄酸化物の排出原因】
 硫黄は、前述のように存在する場所が多岐に渡っており、自然起源の発生源を正確に評価することは難しい。この中で量的に最も多いものは、海域から発生する硫酸塩だが、その大部分は、短時間のうちに海域に沈着し、大気や降水の酸性化には寄与しない。自然起源のもので地球環境問題に寄与するものとしては、火山活動により噴出された大量の火山ガスに含まれる二酸化硫黄などが挙げられる。火山活動により放出される硫黄酸化物は、全世界的にみると絶対量はそれほど多くはないが、局所的に大量に放出されるため、局所的な影響をもたらす。
 人為発生源では、発電所や製鉄・精錬所、各種工場などの固定発生源や、自動車をはじめ鉄道・航空機・船舶などの移動発生源で、石炭や石油などの燃料を燃焼させた際に二酸化硫黄として排出される。

【硫黄酸化物の影響】
 硫黄酸化物は、発生源近傍での人の健康への直接影響や、酸性沈着(酸性雨・酸性霧)への影響が挙げられる。人の健康への影響としては、特に二酸化硫黄が、皮膚・粘膜の水分に溶けて亜硫酸となり、酸としての刺激・腐食作用を発揮して、呼吸器を刺激する。そのため、汚染がひどい地域で生活していると慢性気管支炎や喘息性気管支炎を起こし、最悪の場合、呼吸麻痺を引き起こす。


4.内分泌撹乱化学物質(環境ホルモン)・ダイオキシン
 内分泌撹乱化学物質とは、内分泌系の機能に変化を与え、それによって個体やその子孫あるいは集団(一部の亜集団)に有害な影響を引き起こす外因性の化学物質又は混合物のことをいう。
 内分泌撹乱化学物質は、通常「環境ホルモン」と呼ばれているものである。環境中から人体へ取り込まれ、人体の内分泌系に作用し、通常のホルモンの作用に影響を与える物質である。この内分泌撹乱化学物質による影響は、その化学物質と人体の内分泌系との相互作用がいまだ明らかになっていないものが多い。そのため、内分泌撹乱化学物質の定義は、いまだ国際的に科学的な議論が続けられてきている状況である。
 原因となる物質や作用メカニズムなどは未解明なものが少なくない。仮に、内分泌を撹乱する作用を指摘する場合には、動物実験などにより、要因(化学物質の種類、作用の程度など)について明らかにしていく作業が必要である。

【ダイオキシン】
 ゴミの焼却などによって発生するダイオキシンの類もこの内分泌撹乱化学物質の一種である。
 ダイオキシンとは、ポリ塩化ジベンゾ・パラ・ジオキシン(PCDD)およびポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)、コプラナーポリ塩化ビフェニル(コプラナーPCB)の3化合物の総称。
 その中でも、塩素の付く位置や数の異なる異性体が、PCDDは75種類、PCDFは135種類の合計210種類あるが、このうち人間に対して毒性があるとみなされている異性体は17種類である。コプラナーPCBは、209種類のPCB異性体のうち、PCDD・PCDFと類似の毒性があると考えられているのは12種類である。
 ダイオキシンは、人に対して、がんや奇形を引き起こす可能性があると考えられている、内分泌撹乱化学物質の一種である。

【内分泌撹乱化学物質の排出原因】
 排出原因としては、廃棄物の焼却炉や自動車の排気ガスからダイオキシンが排出されている。他には、農業プロセスによる悪影響として、農薬(殺虫剤・除草剤・殺菌剤)中に含まれているものが排出されたり、工業プロセスや民生プロセスからは、合成洗剤・塗料・化粧品・プラスチック可塑剤などに含まれているものが排出されたりすることが原因として挙げられる。

【内分泌撹乱化学物質の影響】
 人体の内分泌系は、人のさまざまな生体機能を複雑に制御しており、これが撹乱された場合、さまざまな健康影響が生じる可能性がある。しかし、現在のところ、化学物質が内分泌系を撹乱することにより、人に健康影響を与えるという確たる因果関係を示す報告はいまだ見られない。しかし、一方では、女性生殖器系、男性生殖器系、甲状腺、視床下部や下垂体などへの多岐にわたる影響が指摘されている。また、直接暴露される親の世代だけでなく、人体の中に蓄積し(ダイオキシン類は、脂肪に溶けやすく、肝臓や脂肪組織などに蓄積する)、次の世代にもその影響が及ぶことが危惧されている。具体的には、子宮がん、子宮内膜症、乳がん、精子数の低下、前立腺がん、精巣がん、尿道下裂への影響などが挙げられる。


5.非メタン炭化水素
 非メタン炭化水素とは、大気中に存在するメタン以外の炭化水素の総称。非メタン炭化水素は、光化学スモッグ発生の原因となり、自動車、塗装、印刷工場などが発生源である。

【非メタン炭化水素の排出原因】
 有機溶剤を使用する工場、石油類のタンク類などの固定発生源から排出され、また、自動車排出ガスにも含まれているなど多種多様な発生源から排出されている。

【非メタン炭化水素の影響】
 非メタン炭化水素は、窒素酸化物とともに、光化学オキシダントを生成する原因物質となる。また、非メタン炭化水素の一種であるベンゼン、ベンツピレンは、自動車(ディーゼル車)の排気ガス中などに含まれ、発がん性物質として人体の健康影響に寄与する。


6.浮遊粒子状物質(SPM)
 浮遊粒子状物質(suspended particulate matter; SPM)は、10μm以下の粒子のこと。PM10と呼ぶこともある。

 粒子状物質は、花粉・海塩粒子・土壌粒子のように発生源から直接粒子として大気に供給される一次粒子状物質と、化学反応で生じた粒子である二次粒子状物質とに大別される。前者は、平均粒径が1μm以上の粗大粒子で、海洋と砂漠から発生している。後者は、粒径が0.1μmレベルの微細粒子で、二酸化硫黄が反応して生成する硫酸アンモニウムや窒素酸化物から生成される硝酸アンモニウムなどの粒子がこの例である。

【浮遊粒子状物質の排出原因】
 一般に大都市において、粒子状物質の降下量が多いが、これは大都市において粒子状物質が発生しているからである。自動車の排気ガスだけでなく、道路交通による自動車部品・路面材の磨耗(道路粉塵)、土木・建設工事、工業生産、廃棄物処理などで粒子状物質が排出されている。
 SPMには、地球規模で移動してくる物質も含まれている。春先の季節風に乗って日本にも到達してくる、中国内陸部の乾燥地帯で発生した黄砂もSPMの一種である。

【浮遊粒子状物質の影響】
 特に粒径が2.5μm以下の粒子は、人間が呼吸するときに呼吸器中に引き込まれ、肺・気管に付着する。そのため、喘息・気管支炎を誘発する危険性があり、肺がんや循環器系・呼吸器系疾患のリスクを高める。


次回は、第7回 大気環境における環境問題@ 酸性雨 です!



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posted by rido at 00:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 地球環境問題事典 ブックマークに追加する
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