オゾン層の破壊とは、大気中に放出されたCFCなどのオゾン層破壊物質が、成層圏にまで達し、成層圏のオゾン層を破壊することを指す。オゾン層は、太陽光線に含まれる有害紫外線を遮蔽し、人類や動植物の生存を可能にする役割を担っているため、これが少なくなることで、人類や動植物の生存環境が脅かされることとなる。
@オゾン層破壊の仕組み
大気中で非常に安定なフロンガスは、対流圏では分解されない。対流圏に蓄積されたフロンは、大気の運動により成層圏に輸送され、太陽紫外線の作用でフロンは分解される。フロンがその際に、塩素原子を放出するため、その塩素原子が成層圏中のオゾンを次々と分解させていくため、オゾン層が破壊される。
簡単にこのオゾン層破壊のメカニズムについて解説をしておく。フロンから塩素(Cl)が遊離する反応の例を式3、塩素がオゾン(O3)を消滅させる反応経路を式4に示す。
CFC11の場合 CCl3F + 光 → CCl2F + Cl (3)
Cl + O3 → ClO + O2
ClO + O → Cl + O2
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(正味)O3 + O → 2 O2 (4)
この反応により、Clが連鎖的にO3と反応を起こし、通常、1個のCl原子で、数万〜10万分子のO3を消滅させるといわれている。そして、式5で示すClがメタン(CH4)と結びつき、ClがHClとなる反応が起こることで終結すると考えられる。
Cl + CH4 → HCl + CH3 (5)
次亜塩素酸(HOCl)、硝酸塩素(ClONO2)も同様な連鎖反応を示す。こうしてClは次々とオゾン破壊の反応をおこし、多数のオゾン分子が破壊されていくことになる。
Bオゾン層保護の取り組み
オゾン層保護の取り組みは、国際的にも古くからなされている。国連環境計画(United Nations Environment Programme; UNEP)が対策の枠組みの検討を始め、1985年3月にはウィーン条約(オゾン層の保護のためのウィーン条約)が採択され、1988年9月に発効した。そして、具体的な規制のルールなどはこの条約の下に採択される議定書で定められることになり、1987年9月にモントリオール議定書(オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書)が採択され、1989年1月に発効した。その後、議定書は5度改正がおこなわれて、物質により異なるが、1994年〜2040年までにオゾン層破壊物質は全廃することが決められている。
表 モントリオール議定書(1999年12月改正)に基づくオゾン層破壊物質の規制スケジュール
| 規制物質 | 全廃時期など |
| 特定フロン(CFC11,12,113,114,115) | 1996年全廃 |
| ハロン(halon1211,1301,2401) | 1994年全廃 |
| その他のCFC(CFC13など10物質) | 1996年全廃 |
| 四塩化炭素 | 1996年全廃 |
| 1.1.1-トリクロロエタン | 1996年全廃 |
| HCFC(HCFC22など34物質) | 2020年全廃(既存機器の補充用を除く) |
| HBFC(HBFC21など34物質) | 1996年全廃 |
| 臭化メチル※ | 2005年全廃(クリティカルユースを除く) |
| ブロモクロロメタン | 2002年全廃 |
| ※検疫及び出荷前処理用として使用される臭化メチルは、規制対象外となっている。 注:生産が全廃となった物質でも途上国の基礎的な需要を満たすための生産及び試験研究・分析や定量噴霧式吸入器などの必要不可欠な用途についての生産等は規制対象外となっている。 | |
参考文献:「地球環境ハンドブック」
Cオゾン層の破壊による影響
オゾン層の破壊は、太陽紫外線のうち、従来地表にわずかしか届いていなかった短波長紫外線(Ultraviolet light B; UVB)を増加させ、さらにUVBより波長の短い紫外線C(Ultraviolet light C; UVC)までもが地表に届くようになる。この地表に降り注ぐ太陽紫外線の量が増大することにより、人類・動植物にさまざまな被害をもたらす。また、農作物の収穫量などへも影響が出てくることが予想される。また、紫外線の増加は、光化学反応を活性化させるため、光化学スモッグの増大にもつながる。
a)人類への健康影響
紫外線を浴びた皮膚には、光老化現象が起き、最も重大な影響としては、皮膚がんなどの腫瘍の増加をもたらす。他にも、しみ(色素斑)・深いしわ、免疫機能の低下などの症状が現れる。また、眼への影響として、結節性帯状角膜炎や白内障などを引き起こす。
b)植物への影響
植物への影響としては、紫外線の増加による遺伝子の破壊や光合成の電子伝達系・酵素反応を阻害することにより、植物の成長・葉の色素形成などを阻害する原因となっている。しかし、紫外線に対する強度は、植物の種類によって大きく異なるため、紫外線による影響を一般的に予測することは難しい。
c)海洋生物への影響
また、最近海洋生物への紫外線増加による影響が話題になっている。特に、藻類に関しては、生態系の保全といった観点だけではなく、二酸化炭素の吸収源としても重要であるが、まだどの程度の影響が及ぶのかは、解明されていない。
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